ネイビーウィングの翔破

シアトル・シーホークス応援ブログ

【42】D.K.Metcalf vs. A.J.Brown

 
 シーホークスのレシーバーとしてルーキーながらも頭角を現したメットカーフは、タイタンズのレシーバーA.J.ブラウンとともに、オフェンシブルーキー・オブ・ザ・イヤーの候補となっています。2018年ミシシッピ大のレシーバーグループの中心を担った2人は、共に強靭な肉体を誇っており、それも含めた類似性から比較してみたいと思います。

D.K.Metcalf

height 6'3''
weight 228pounds
40-yard dash 4.33seconds
Vertical jump 40.5inches
Broad jump 134.0inches
3-cone drill 7.38seconds
stats game rec yds avg TD
2016 2 2 13 6.50 2
2017 12 39 646 16.56 7
2018 7 26 569 21.88 5
2019 16 58 900 15.50 7


A.J.Brown

height 6'0''
weight 226pounds
40-yard dash 4.49seconds
Vertical jump 36.5inches
Broad jump 120inches
3-cone drill N/A
stats game rec yds avg TD
2016 12 29 412 14.21 2
2017 12 75 1252 16.69 11
2018 12 85 1320 15.53 6
2019 16 52 1051 20.20 8

*1*2*3*4をもとに作成。身長、体重はいずれもドラフト時

2人のルーキーイヤーについて


 メットカーフがブラウンを兄と呼ぶほど、2人は親しく、その仲は高校時代までさかのぼります。メットカーフはミシシッピ州オックスフォードで、ブラウンは同州スタークヴィルでそれぞれ育ち、100マイルも離れたところに住みながらも、高校時代から切磋琢磨してきました。
 1巡目に指名されなかったのはプライドにこたえるものだったとブラウンは語っています。ドラフト1日目の夜にはメットカーフとブラウンはそのことを話し合ったそうで、悲しみもあったけれど同時に不満が募ったことを明かしています。その反骨精神で、2人のこのルーキーイヤーが生まれたようなのです。
 メットカーフはレギュラーシーズンで58キャッチ、900ヤード、7TDを獲得しました。イーグルス戦では53ヤードTDと36ヤードレセプションを記録し、160レシービングヤードによってプレーオフにおけるルーキー記録を樹立しました。タイラン・マシューやK.J.ライトをして、カルビン・ハリスをそこに見たと言わしめています。ちなみにカレッジ時代のラストシーズンでは、怪我の影響もあって7試合の出場にとどまっていました。
 A.J.ブラウンは52キャッチ、1051ヤード、8TDでレギュラーシーズンを終えました。20.2yprはマイク・ウィリアムズの20.4についでリーグ2位という記録です。マーカス・マリオタからライアン・タネヒルへの変更によってキャッチ数は増え、異なる4試合での100ヤード記録を達成しています。カレッジでの最終シーズンでは、1300ヤードを超え、6TDを決めました。
 NFLでの今シーズンについて、A.J.ボイエ、クリス・ハリス、ジャレン・ラムジーといったトップCBとマッチアップできたことの素晴らしさをブラウンは語り、この経験がレシーバーとしても人間としても自分を成長させてくれた、と言います。
 メットカーフがかなり勉強熱心だということは以前少し触れさせていただきましたが、ブラウンもQBと同じくらい映像を見て、フィールドのすべての状況を見ることでチームに貢献できる選手として成長できたようです。メットカーフの存在はカレッジ時代から変わらずブラウンにとって重要であり、ワイルドカードの試合前にチャットをするなどプロ入りしてからも連絡を取り合っています。USA TODAY Sportsの取材に対し、「ディフェンスの動きのことになると頭のきれるメットカーフは、大学時代に大きな助けとなってくれたし、選手としての自分に大きく影響している、そのことを本人は知らないけど」と微笑んでいたようです。*5*6


D.K.メットカーフはルートを走れるか

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 今シーズンの成績を見ると、両者のスタッツはわずかにブラウンが上回っています。平均獲得ヤードにおいてはブラウンの成績はリーグでも上位です。また、ドラフト時において、ルートランニングやランアフターキャッチ、ドロップ率といった点で、ブラウンの評価のほうが高かったのは事実です。
 ドラフト時においてブラウンは、そのサイズがプレーのスピードに悪く影響しておらず、スロットレシーバーとしてのこの体格は、ランアフターキャッチで非常に有利だとされていました。また、ルートランニング能力に長けており、セパレーションのうまさも高評価でした。ボディキャッチャーというよりはハンドキャッチャーで、アーション・ジェフェリーに似ているとの指摘もありました。その結果今シーズンはドロップ2回、ファンブル1回と、ドロップ、セキュリティの両面で安定したプレーを見せました。一方で、ディフェンスの位置は把握していてもチームメイトの位置やプレーがどこで進んでいるのかを把握できていないことがあり、背後でRBがタックルされていることもしばしばあったと言われていました。*7その点、ポストシーズンにおけるデリク・ヘンリーのランを中心とするオフェンスにおいて、良いブロッキングの場面は随所に見られたと言って良いと思います。
 メットカーフは、カルビン・ジョンソンやフリオ・ジョーンズとの類似を指摘される体格ですが、この2人のようにすべてのフォーメーションで動けず、もっぱらLWRのみでカレッジ時代を過ごしました。この理由の一つとしてあげられるのが限られたルートツリーでした。ルートランニングに関しては優れているとはいえないものの、脚力や手の動きでプレスカバレッジでは有利とされました。サイズに見合わないずば抜けたスピードですが、ランプアップするようなスピードではないので、これもまたプレスカバレッジで有効と言われていました。ドラフト前2シーズンでのドロップ率が非常に高いという点、怪我でシーズンを棒に振った点なども批判の対象となっていました。*8
 ルーキーイヤーのレシーバー陣に関しては、PFFにおいてブラウンの評価が高くなっています。

 しかしながら、メットカーフはしっかりルートを走っています。メットカーフに対して贔屓目になるかもしれませんが、客観的事実からも彼の成長は確かなものです。それはワイルドカードの爆発的活躍のみに所以するものではなく、シーズンを通してところどころに発見できるものでした*9
 3コーン(7.38秒)、ショートシャトル(4.5秒)*10での成績が振るわずチェンジディレクションとラテラルの動きに疑問符がついたメットカーフですが、自分の強みと弱みを理解し、一方を伸ばし片方を抑えることで、スラントでのキャッチを10/14としています。
↓week1から見られたスラントルートでのキャッチ

 得意分野を伸ばすという点で、バーティカルルートでの成長は顕著だったと言えます。100回のターゲットのうち36回はフェードやポストルートでした。ヘッドフェイクやバーティカルステップを活用しCBを引き離すことで有利に立つこともできました。また、このルートでダブルムーブからフリーになる場面は多く見られたのです。
↓メットカーフのダブルムーブの一例

 シーズンが進むにつれてヘッドフェイクやジャブステップにCBは対応してきますが、それにつれカールとカムバックルートでの成長が見られました。バーティカルルートがクッションとなって、CBはメットカーフにスペースを与えてしまうこととなり、カールやカムバックルートが成功し始めます。


 また、シーズンを通してウィルソンにアジャストできる能力が見られ、ウィルソンとのラインを構築してきたボールドウィンやロケットと同様に、スクランブルに対応したブロッキングや、プレー崩壊後のポケットからの移動に合わせた対応などが見られました。こうしたウィルソンとの信頼関係は、タイミングと信頼がものを言うバックショルダーパスにつながるものでした。
↓バックショルダーパス

 カーディナルス戦(week4)におけるエンドゾーンでのインコンプリートはジャンプのタイミングが合っておらず、キャッチ時点でプレーがソフトになってしまったことが原因であった点、パンサーズ戦では完璧なタイミングのジャンプでTDを決め、49ers戦(week17)でも同じようなプレーでTDを決めており、改善ぶりはめまぐるしいものがあります。カレッジ時代からのLWRへの偏りから、レフトで63%、ライトで26%、スロットで11%へと、フォーメーションの多様化も見られます。スティーラーズ戦、イーグルス戦(week12)、ブラウンズ戦などでキャッチ後のタフさも垣間見える場面があり、ドラフト時の批判は一つずつ消されていることが分かります。ドロップに関しては7ドロップ、3ファンブルで、ブラウンとは対照的でしたが、FieldGullsのAlistair Corpは能力よりは集中力の問題だとしています。

 メットカーフもブラウンも、NFLでのキャリアは始まったばかりです。まだ22歳という若い2人は、これまで通り友人としても、ライバルレシーバーとしても高め合い、伸びが期待される2年目のシーズンで、さらに活躍してくれることでしょう。