ネイビーウィングの翔破

シアトル・シーホークス応援ブログ

【32】2019-2020シーズン bye week パスラッシュ再考

 
 今週はバイウィークということで、オフシーズンから特に重要とされてきたパスラッシュについて改めて記事にしてみたいと思います。

[目次]

予想に反して…

 オフシーズンからのパスラッシュ問題の流れを振り返ると、事の発端はフランク・クラークがチームを去ったことでした。ドラフトではDEのL.J.コリアーを1巡で指名しました。しかしオフシーズンの怪我から出場機会は減り、クイントン・ジェファーソンの代わりとして出場することもありましたが、現在もインアクティブの状態が続いています。カシアス・マーシュやバーケビアス・ミンゴというパスラッシュ陣の可能性もありつつ、ジギー・アンサとの契約となりました。しかし彼も怪我の影響が激しく、出場機会が減るとともに、成績も芳しくありません。そしてオフシーズンの最後に、ジャディヴィオン・クラウニーと契約が交わされました。しかしながらテキサンズ時代の輝きとは真逆に、開幕から9試合でたった2サック、PRWRはリーグの中でも高い数字をマークしている一方で成績が伴いませんでした。サック数のみではパスラッシュの良し悪しは測れないとはいえ、QBヒットやQBハリーの成績も良くなかったのが事実です。710 ESPN seattleのJim Mooreは、ベテランの少ないセカンダリーが、良くても平均並であるとされる今年はさらに危機的だったとしています。

クイントン・ジェファーソンがパスラッシュの要に

 そんな中で、クイントン・ジェファーソンがパスラッシュを支えることとなります。サックはベンガルズ戦の2回にとどまるも、プレッシャーやノックダウンに関してはチームの2番目のベスト記録で貢献し、クラウニーやアンサがくすぶっている反面活躍を続けました。

49ers戦で何が起きたのか

 ところが先週の試合では、黄金時代の再来を告げるようなシーズンを送る49ers相手に、5サック、10QBヒットを記録することとなります。パスディフェンスはリーグ1位、スコアリングディフェンスもリーグ2位と素晴らしい成績を残しました。その要因については以下の点が挙げられます。

①フロント4のみのパスラッシュ

 直近のバッカニアーズ戦でのサックはLBによるものであるなど、LBのパスラッシュが多用されていました。今回の試合序盤も、CBフラワーズによるサックがありました。しかし試合が展開するにつれ、フロント4のみのパスラッシュで動き始め、4人のみでサックも決めるようになります。これによってLBはセカンダリーとともにカバレッジへ回ることとなり、4人か5人のレシーバー相手に、7人がカバーに入る状況となりました。

②DTリードの存在(チームワーク)

 ジャーラン・リードは、出場停止処分明けの4試合で初めての貢献をしたと言えます。昨年9.7%のPRWRの一方で10.5サックを記録していたリードは、出場停止期間もパフォーマンスを維持し続けており、パスラッシュに一石を投じてくれることが期待されましたが、復帰戦のレイブンズ戦では思うような結果を残せていませんでした。しかし、49ers戦では1.5サックと1FFを記録し、DLのチームワークの中でキャロルの期待通りに、これまでのパスラッシュとの違いを見せてくれました。
 ちなみに、2Q残り2:57、10-0で得点がなかったシーホークスが、リードのストリップサックとクラウニーのピック6によって流れを変えた場面についてですが、Dave Wymanは以下の動画で、DTプーナ・フォードが大きな役割を果たしていたことを指摘しています。

 
 リードとクロスしてラッシュをかけるフォードは、非常に素早い動きをしたことで、相手OLの注意を引き付ける形となり、フォードに対応することで横を向くような形になったOLたちはリードのサックを止めることができなかったとされます。下に貼り付けた問題のシーンを見ると、相手C#63とG#75は横を向く形になっていることが分かり、リードに対応できていません。このようなチームワークが非常に効果的に機能したようです。


③ シャキーム・グリフィンをパスラッシュに起用

 アンサをサイドラインに下げ、今シーズン初のスナップとなるグリフィンを投入したことも、鍵となったかもしれません。
 3rdダウンパスシチュエーションにおいて、クラウニーの逆サイドで、アンサ、グリフィンともに14スナップだったのが、4Qではグリフィンのみの起用となります。スピードが武器の彼はチャンスを与えられますが、そのラッシュに関してはガロポロにプレッシャーは与えられておらず、仮に与えられていたとしても、彼がフィールドを見渡す3.8秒を過ぎたあとのことで、時すでに遅しといった状況だった、という見方もあります。
↓シャキーム・グリフィンの全スナップ


 ただ、オフシーズンでシャキールとともに肉体強化を行ったことに加え、ウィークサイドからストロングサイドへのポジションの移動によって、カレッジ時代の彼のプレーがNFLのフィールドでも見られるようになったことで、今回の起用は有効だったとも言えます。
 1年早くNFL入りしたシャキールに続き、2018年、同じシーホークスにドラフトされたシャキームは、そのハンディキャップをハンディキャップとしてとらえる私たちの姿勢そのものを変えてくれるような、鮮烈なデビューを果たし、日本のメディアにも取り上げられるほどでした。
www.asahi.com

最後に

 パスラッシュの改善はオフシーズンからさんざん叫ばれ、1巡目指名やベテランの加入をもってしても、なかなか効果は表れませんでした。アンサに関しては、シーホークスのパスラッシュに「何ももたらしていない」と酷評されてしまうなど、その限界説もあります。シーズン開始に間に合うかどうか、と言われていた怪我が長引いていることが大きいと思われます。怪我に関して言えばルーキーのコリアーも、ルーキーであること以上に苦しんでおり、また、ラシーム・グリーンやブランドン・ジャクソンがプレシーズンで活躍を見せましたが、彼らがレギュラーシーズンの中盤まで重要になるとはあまり考えにくかったのではないでしょうか。シーホークスは結局、クラウニーのみでしか補強に成功しなかったと言えるかもしれません。
 プーナ・フォードはこれまでも少しながら成績は良く、昨年のパスラッシュの要であったジャーラン・リードが本調子になってきたことで、チームプレーが機能し始めます。そしてシャキーム・グリフィンがパスラッシュに加わることとなりますが、これを最終手段と見るか、これまでからの単なる方向転換と見るかは難しいところであり、グリフィンがパスラッシュに貢献できているかも微妙です。彼が今後のタフなスケジュールで、どのようにプレッシャーをかけ、チームプレーのディフェンスに変化をもたらすのか、注目されます。
 49ers戦の結果のみでパスラッシュに安心することはできない一方で、パスプロテクションランクは7位といわれる49ersのOLを圧倒する場面が多かったのは事実であり、これがメンタル的にもプラスにつながるはずです。プーナ・フォードの活躍は、サック数のみでは測りえないチームプレーによるパスラッシュの重要性や効果を示しており、クラウニーというキーパーソンを支えるチームプレーが今後も重要になるでしょう。これはセカンダリー陣とのチームワークとも関連し、パスラッシュの成功が、カバレッジに大きく影響することが期待されます。


参考:
Seahawks' pass rush hasn't developed like was expected
Seahawks finally give Shaquem Griffin chance to use his speed as rusher - Field Gulls
Seattle Seahawks pass rush wakes up against 49ers’ front | Tacoma News Tribune
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=11&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwi-0IiSqPblAhXSP3AKHd60Dd84ChC3AjAAegQICBAB&url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DgXRUG7pxfjE&usg=AOvVaw18NPntUsGXlAuyvOSfbse3
Clayton: If Seahawks are going to win division, pass rush must get going
A 3rd Seahawks D-lineman deserves credit for Reed sack, Clowney TD
https://www.espn.com/blog/seattle-seahawks/post/_/id/33379/seahawks-hope-jarran-reed-can-spark-their-lagging-pass-rush
2019 NFL OFFENSIVE LINE RATINGS | Football Outsiders